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手記 Edit : 2023.07.08 Update : 2024.11.06
NORIKIYOの犯行声明文を読んで、効率化が生み出す”スマートな悪”について考えていた。

NORIKIYOの犯行声明文を読んで、効率化が生み出す”スマートな悪”について考えていた。

先日チームでラッパーのNORIKIYOさんの犯行声明の話をしていて、このWebサイト(https://hankou-yokoku.norikiyo.biz/)にある、NORIKIYOさんが逮捕された時に綴った犯行予告を読んでいた。

画像を抜粋したWebサイト:
NORIKIYO WEBSITE
ニュースの真相はこちらの記事を:
収監直前のNORIKIYOが語る、10thアルバム『犯行声明』の真意

そしてこの文章の冒頭、「世の中が単純な物、頭を使わなくていい物を求めすぎているような気がする」、この言葉に私は大きく頷いていました。
自分がyoutubeやsnsなどのインターネットに情報や娯楽を求め、そして、例えば美容の情報・ニュースに対する誰かの見解、そういう物を自分の頭を使わずに、”誰かの発信や考え”によって答えにたどり着くことが多くなっているなと感じていたからです。

youtubeなどの編集された媒体の中で、情報は綺麗に整理されわかりやすく、ほしい答えにすぐたどり着くことができています。
だけど、そういう便利さは、自分の頭で自分の経験で考えるということを取り上げているとしたら。。
便利さの裏に何を取りこぼしているかを、最近ずっと考えていました。
そして、少し前に「スマートな悪」という本を読んで、そのタイトル通りの「スマートな悪」という言葉を覚えました。(笑)
スマートな悪 技術と暴力について
戸谷 洋志 (著)

スマートさとは、余計なものや苦痛を排除し、すべてを「合理的に最適化」する「賢さ」である。
そうした思考/志向に駆り立てられ、突き詰めた果てに立ち現れる「悪」は現代人にとって必然なのか?
ー本書の帯より


本の中では、効率性(スマート化)を優先した思考の中で起こる悪というものを説明していました。
その中には、”効率的に”を突き詰めた結果、ナチスの時代にユダヤ人虐殺につながっていた思想についてや、身近な例でいえば、満員電車の中で起こる思考について触れられていました。

満員電車という効率的に目的の場所へ向かう乗り物の中では、人がぶつかり合って不快な思いをすることが、なぜか耐えられるものになっていたり、人身事故が起きた時に、そのことに対する心配や考慮よりも、自分が遅れる・目的を遂行できないかも、のような暴力性を含む思考になることがある、ということに触れられていました。

ではそういう思考にいつだってなり得る、効率性を重視される社会の中でどう生きていけばいいのか、とまたすぐに答えが欲しくなるわけですが。。
ヒントとなることが書かれていたけど、それは自分で考えなきゃいけないのかなぁ。という感想でした。

そんな中、前にチームのyukaちゃんとごはん食べていた時の言葉を思い出しました。
今はアプリで良い人を探すのが当たり前だねーと話していた時のこと。
アプリは、自分の情報も相手の情報も少し知った上で出会えるから、息が合うかも、とか趣味が合いそう、年収もわかれば生活水準とかも想像できて効率的だねっていう話の中で、yukaちゃんが言っていた「でも何にも情報を知らない状態で、ふとした時に発見する相手との共通点とか意外性・そこから衝動的に相手に好意を持つような感情を体験することは少なくなるかもしれないね、的な言葉です。

この時にこぼれ落ちる感情は、スマートな”悪”的な思考や行動ではないですが、スマート化されていく物事やそれを使う私たちの行動の中では、何かが少しずつこぼれおちる可能性があるのだろうなぁと思いました。

さらに私は日々進化していくWeb業界で働いているので、効率化や情報の更新・技術のアップデートは必須です。
だけど、スマート化されていくものと、それによって無くなっていくかもしれないものを自覚的に見つめながら、それが悪にかわる可能性があるときは、NOと言えるようになろう(2018年に数千人のグーグルの社員たちが「ドローンの軍事利用をやめろ」と同社のCEOに対して抗議の声をあげたニュースのときのように。)と、そんなことを考えていました。

Miki Kohinata

大学時代、将来独立することを決めエンジニアの道へ。就職したIT企業で藤本と運命的に出会いKOHIMOTO設立。目指すのは人の心に寄り添えるエンジニア。人生のテーマソングはWeekend by 5lack。