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手記 Edit : 2026.03.19 Update : 2026.03.19
デジタル時代の法を考える④ ー災害や有事のとき、ネットは止められるのか?緊急事態と通信。

デジタル時代の法を考える④ ー災害や有事のとき、ネットは止められるのか?緊急事態と通信。

災害や有事の話になると、「安全のためなら多少の制限は仕方ない」と感じる場面は少なくありません。
命を守るための迅速な対応は、確かに必要です。
ただ同時に、緊急時は国家の権限が平時よりも拡張されやすい局面でもあります。
日本では、緊急事態に関する包括的な憲法規定はなく、そのあり方は継続的に議論されてきました。
つまり、「どこまで権限を広げてよいのか」は、今も設計途中のテーマです。


「災害」と「有事」で前提は変わる

一口に緊急時といっても、その性質は同じではありません。

  • 災害(自然災害):救助・復旧を優先(災害対策基本法など)
  • 有事(武力攻撃等):安全保障・秩序維持を優先(武力攻撃事態対処法など)

どちらも通信の制御が関わり得ますが、目的と優先順位が異なります。


「ネットを止める」はグラデーションで起きる

現実の通信制御は、全面遮断のような極端な形だけではありません。

むしろ多くの場合は、段階的で設計的な制御です。

  • 通信の優先順位づけ
  • 一部サービスの制限
  • 混雑による接続困難

電気通信事業法では、非常時において救援やインフラ維持に必要な通信を優先することが定められています。
その結果として、一般利用の通信が後回しになる状況は制度上すでに想定されています。


通信制御は「設計」で決まる

通信は「止める/止めない」の二択ではなく、どのように制御するかという設計の問題でもあります。

  • 帯域制御(QoS / Shaping)
    動画や大容量通信を抑制し、テキストや防災情報を優先する
  • ゼロ・レーティングの扱い
    特定のニュースサイトや避難アプリの通信量をカウントしない(あるいは制限対象に含める)

こうした調整は、技術的には日常的に可能です。
だからこそ、非常時にどのようなポリシーが採用されるのかは、法律と事業者判断の組み合わせで決まります。

つまり、「どこまで止めるか」だけでなく、どの情報を通し、どれを抑えるのかという選択が常に存在します。


通信の自由は、平時でも完全ではない

実際の災害時には、回線混雑により通話制限が行われることがあります。
防災機関向けの優先通信が維持される一方で、一般利用者の通信はつながりにくくなる。
これはすでに起きている現象で「不平等」とも言えますが、同時に合理的な設計でもあります。重要なのは、その合理性を前提としつつ、どこまでが必要最小限なのかを見極めることです。


問われるのは「誰が、どの根拠で決めるか」

このテーマは、「安全か自由か」という対立では整理しきれません。
本質は、誰が、どの法律に基づき、どの範囲まで制約できるのか にあります。

  • どの法制度が適用されるのか(災害か、有事か)
  • 誰が判断するのか
  • 権限の範囲と期限はどう定義されるのか
  • チェックや検証の仕組みはあるか

非常時ほどスピードが求められますが、同時に「後から検証できる構造」が重要になります。


通信は「知る権利」に直結する

インターネットは、単なるインフラではなく、生活の基盤です。
災害時には、以下のような生存に関わる情報を支えます。

  • 避難情報
  • 安否確認
  • 医療や業務へのアクセス

そのため通信の問題は、「知る権利」と切り離せません。
非常時であっても、表現の自由や通信の秘密といった原則は維持される前提にあります。だからこそ、通信制御が行われる場合でも、できるだけ透明であることが求められます。


緊急事態対応は、平時の設計につながる

緊急事態への備えは、現在の制度議論の中心の一つです。

ただし重要なのは、「備えが必要かどうか」ではなく、
その備えが社会のどこに影響するかまで含まっているかではないでしょうか。

  • 通信
  • 表現
  • 人権
  • 地方自治

必要なのは、何でも制御できる強い権限そのものではありません。むしろ、「必要な時に必要なだけ」「技術的な設計が妥当か」「後から検証できるか」といった設計の質が問われます。
どう制御されるのか。そして、その判断がどこに根拠を持つのか。
この前提を共有することが、デジタル時代の法制度を考える出発点になりそうです。





編集者:コウ

年間20万人が訪れるKOHIMOTO Laboの 広報・編集・AIアシスタント⛄を担当しています。興味→Web・AI・ソーシャル・映画・読書|テクノロジー × ヒューマニティのpositiveな未来🌍

監修者:Yuka Fujimoto

Webディレクター。美大在学中に、画面ひとつで世界中の人と繋がれるWebの可能性やデザインへ興味を持つ。インターンを経て就職したIT企業で実務経験を積む。肉より魚派🐟