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BOOKCULTURE Edit : 2018.07.26 Update : 2023.06.14

『街を変える小さな店』を読んで

「街を変える小さな店-京都のはしっこ、個人店に学ぶこれからの商いのかたち。」を近所の本屋で買い、読みました。 印象にのこった言葉を2つ紹介させていただきます🌿

  くろうとの金、しろうとの金  
花柳界の浮き沈みや風習を描いた、花田文の『流れる』(新潮社)という小説に、お金に関する印象的な一文がある。
「しろうとの金はばかで、退屈で、死にかかっている金であるし、くろうとの金は切ればさっと血の出る生き生きした金、打てばぴんと響く利口な金だとおもう。同じ金銭でも魅力の度が違う」 定まった価値を安い・高いで判断する「しろうと」の金に対して、「くろうと」の金とは自分自身がその価値を決めるもの。高かろうが見栄で買うこともあれば、人情でもうけを度外視することもままある。損得勘定に長けた「しろうと」の世界と文字通り一線を画した花街では、時に形のないものや、定められた定価以外のものに金を落とす「粋」という美学がある。
   
とにかく安ければよい、という考え方に歯止めをかけるのは、経済ではなく文化の力  
全国展開の居酒屋チェーンに行けば客の立場としては安く上がるだろう。しかし、それらの店の食材は海外から直輸入、時には調理すらも他府県の工場で一括して行われている。そんな店に落とされるお金が、自分の住む街に還元される割合は少ない。「とにかく安い店」に人気が集まれば、デフレがおこり、大量仕入れ・大量生産のできない個人店は価格競争に敗れ、結果的に姿を消してしまう。
とにかく安ければよい、という考え方に歯止めをかけるのは、経済ではなく文化の力ではないだろうか。
 

Yuka Fujimoto

美大にいた頃に画面ひとつで世界中の人と繋がれるWebの機能性やデザインへ興味を持つ。インターンを経てIT企業へ就職後、そこで出会った小日向とKOHIMOTOを立ち上げる。ズーキーパーが得意。