MENU
CLOSE
映画 Edit : 2024.11.19 Update : 2024.11.20
話し相手に「鼻毛でてますよ」←これ善良?「傲慢と善良」を読んだ感想①

話し相手に「鼻毛でてますよ」←これ善良?「傲慢と善良」を読んだ感想①

こちらの記事は、こひもとの読書録#3-1の内容の一部を抜粋し編集を施したものです。よろしければ、以下より全編を聞くことができます。


2人とも辻村深月すき。


ゆか今日は、今映画でも話題になってる小説の「傲慢と善良」です。
みき私たち、辻村深月めっちゃ好きだよね。
ゆかうん、10代の頃からずっと読んできて、新しい作品出る度にみきちゃんに借りて読んで、この傲慢と善良も発売当初に読んでたん。
みきお互いが出会う前にそれぞれ読んでいて、知り合って本の話になって意気投合して。
ゆかそうそう。それでマジで仲良くなったっていうのもある。

あらすじと真実について。


ゆかじゃあまず最初にあらすじを紹介していきたいと思います。
ネットで調べて出てきたのを、ちょっと短くしたものを私の方で読んでいきます。

西澤架は東京育ちの39歳。父親の後を継ぎ、小さな会社を経営している。架が友人たちと飲み会中に恋人の真実が電話で助けを求めてきた。ストーカーが彼女の家に侵入したと言うのだ。慌てて彼女のもとへ駆けつけた。架はこのことをきっかけに真実と同棲を始め、婚約した。架と真実は婚活アプリを通じて知り合った。結婚式の日も近づき、真実は結婚準備のため寿退社。全てが順調に進んでいたはずなのに、真実が突然失踪した。ストーカーによって連れ去られたのではと考えるが、警察からは事件性がないと判断されてしまう。真実の母親と連絡をとり、真実が地元にいた頃に世話になったという結婚相談所の小野寺や彼女を介して過去のお見合い相手などと面会を重ねていくうちに、架は段々と自分の中の真実像と本当の真実の姿の違いに気が付いていく。

みきうん、真実は地方育ちで地方の大学とかに進学して、両親が望むまま就職して地元で結婚してほしいみたいな望みがあって、それにずっと従って生きてきたのが真実っていう人物で、真実が結婚するって決めて東京に出るんだけど、その時にマッチングアプリで出会ったのが架だよね。
ゆかそう、真実は何か恋愛経験とかあんまりなくて、両親が求めるいわゆる”良い子”に育ってきた女の子。

架の友達性格わる

ゆかで、何だろう。それが鼻についた架の女友達とかにめっちゃ悪口とか言われちゃうんだよね。
みきキラキラ系の周りにいる女の子とかに、婚約者として認めないじゃないけどそういう扱いをされて。
ゆか架の友達は架と同じ大学出て、バリバリ仕事とかもして英語をペラペラでみたいな。
みきキラキラしてて家庭も持ってるっていう。仲良しグループの女子?
ゆかでも、その女友達がめっちゃ性格悪くて真実のインスタとかを見て「この子もよくやったね」的な悪口を裏で言われたりしてるんだよね。
みきあと、真実と会った時に一緒にホームパーティーしてて、真実が気を遣ってお箸をそういう食器とか気配りをやるのも「上手く立ち振る舞うことで結婚に近づこうとしてるんだね」みたいな。
ゆかそうそう。
でもほんとのキラキラ女子たちあんまり周りに興味ないから、こんな性格悪い人いる?って思った。笑
みきそう。今映画の試写会の宣伝かなんかやっているのがYoutubeで流れてきたんだけど、ヒコロヒーが「人の恋愛に口出してる奴はしょうもない」みたいなコメントをしてたから、それぐらいちょっと印象に残るキャラ。
ゆかまず第1の感想として、みんなこの女友達に何か言いたくなるよね(笑)

裏で真実のインスタとかを調べてそれを酒のつまみに悪口言ったりしたりしてる女の子たちだったと思うんだけど、真実は誰にもその愚痴とかすら言わなかったのが偉いなって。
みき確かにそれは架と結婚したいからって思ってたからにしてもすごいよね。私だったら他の友達とかに絶対愚痴ったりするから。
ゆかお姉ちゃんとかね。だから何か、本当にいい子なんだよね。そういうとこも含め。

迷える婚活女子の首根っこを掴んで現実を見せてきた

ゆか辻村深月作品を今までずっと読んできて、すごい好きだからこそ、この物語が辻村深月っぽくないなって思って。今まで真実みたいな良い子だけど、あんまり人に言ったりできないけど何かを思ったりしてる子の味方みたいな話が結構多かった気がするから。
みきわかる。
ゆかこの物語も、味方ではあるんだけどこの物語って色々な事を肯定してきた辻村深月が初めて「こうすべきだ」っていうのを提示した本だったのかなって思って。

ブルーロックである男の子が負けてチームから親友の男の子を取られちゃうシーンで、もうダメだみたいな感じでめっちゃネガティブになって下を見るんだけど、その負けた同じチームの男の子が「下を見るな。あの背中をちゃんと見とけ、ちゃんと悔しがって、ちゃんと現実を見れないやつは前に進めない。」みたいな感じで、めっちゃ首根っこガってやって、その背中を見せるシーンがあるんだけど、それでのちのちまた親友の子と子と同じチームになれるんだけど、辻村深月が迷える女の子の首根っこをガって掴んで現実を見せた本なのかなって。
みきなるほどね。
ゆか辻村深月自身が多分、ご結婚されてて子供を持って、その自分の生き方が幸せだったなって思ってるが故の(それ以外を作者自身は経験してないわけで)自分が結婚をして幸せだったよ。っていうのを伝えかったた本だったのかなって思った。
みきすごいわ。もう大ファンすぎて、作者の気持ちを。笑
ゆかそう。笑
あと、あれいつもの感じとなんで違うんだろうって思った時に。
みきなるほどね。わかる。笑
いつも寄り添ってる感じがあったからね。

でもやっぱり流石だなって思ったところは、自分の中で胸がきゅっとなるような感情とか、それが人に言えない感情だったり、この気持ちって持ったらダメだよなっていう感情の時もあると思うんだけど、そういう感情の機微がすごい鋭く繊細に描かれていて。で、さらに辻村深月ってそのキャラを悪者にはいつもしないじゃん。だから自分もこういう感情になるのもしょうがないのかなって思って、自分を受け入れる度量をくれる所が。

でも、その辻村深月が、婚活っていうのに焦点を当ててくるっていうのが意外だった。
そして「傲慢と善良」っていうタイトル。
傲慢と善良って相反する悪と善という言葉に思えるんだけど、この物語の中では、善良である真実が親の言うとおりに物事を運んだり、世間知らずだったり無知で、今まで自分の意思を親にゆだねて、婚活っていう自分が誰かを選ぶってなった時に、傲慢になるっていう風なのを描いたのがやっぱりすごいなって思って。
ゆかうんうん。
みきそれがゆかちゃんの言ってる首根っこ掴むじゃないけど、その善良すぎる人物にも活をいれるみたいな。
ゆかうん。「傲慢と善良」を、善良は真実、傲慢は誰々っていう他の人物に書くんじゃなくてね。
前半の架目線の善良な真実が、どんどん後半になるにつれて真実が自分が意思表示をするようになって、傲慢に変化していくみたいな。その、傲慢さを肯定してるところがすごいよね。
みきすごい。さすがってなったし、そこを繋げて、傲慢に生きて良いんだぞっていう、最終的には後押しする形では終わっていたよね。

「相手にピンとこない正体は、皆さんが自分につけた値段ですよ。」


ゆかこの本を最初に借りたのが1年前くらいだったと思うんだけど、話全部忘れちゃってたんだけど、何か結婚相談所の小野里さんの言葉だけ、明白に覚えていて。
みきそういう言葉めっちゃあったよね。タイトルに繋がる言葉の中で引用するね。

皆さん謙虚だし、自己評価が低い一方で自己愛の方はとても強いんです。傷つけたくない、変わりたくない、高望みするわけじゃなくてただ細やかな幸せが掴みたいだけなのに、なぜ。と。親に言われるがまま婚活したのであっても、恋愛の好みだけは従順になれない。真実さんもそうだったのではないかしら。
ゆか「謙虚だし自己評価が低い=善良」「自己愛の方はとても強い=傲慢」として、真実の中にも善良な部分と傲慢な部分もあるっていう所が、タイトルにもかかってるよね。
みきそうだね。あと、もう一個2人で話して話題に上がったドッグイヤーしてた箇所があった。

ピンとこないの正体は、その人が自分につけている値段です。値段という言い方が悪ければ、点数と言い換えてもいいかもしれません。その人が無意識に自分はいくらとつけた点数に見合う相手がこなければ、人はピンとこないと言います。私の価値はこんなに低くない。もっと高い相手でなければ私の値段とは釣り合わない。皆さん、自分につけている値段は相当お高いですよ。
ゆかうん、みんな自己愛や自尊心が高い…これって良い事だと思うんだけど。きっとその方が幸せに生きれるし。

でもだから、結婚を目的とした時に意識するべき事として、相対的な自分の評価を高く見積もっていて、みんながそれをしているから、客観的に見たら釣り合うぞっていう2人でも、お互いピンとこないじゃないけど、もっと高みを目指す感じになってるっていうのが、婚活市場におけるマッチングしない現象っていうのは確かに一理あるかもって。
みき これも、その辻村深月が現実を見せてるシーンではあったよね。婚活って私たちの年でも本格的にやるかやらないかは人それぞれだけど、「ピンとくる人がいない」みたいなのってよく聞く言葉じゃん。それを的確に表現しててすごいって思った。

話し相手に「鼻毛でてますよ」←これ善良?

ゆかちょっと話が変わっちゃうんだけど、お見合い相手の2人目に出てきた人で、真実がその人と何を話せばいいか分からなくて「将来、こういう車乗りたいんですよね。外車でカッコいいから憧れてて。」みたいな話をした時に、その人がめっちゃ素直に「あれ外車じゃなくて国産車ですよ。」みたいな感じのことを言って。
で、真実はショックを受けたけど、この人は真面目で善良なんだ…みたいな風に言ってたシーンがあったと思うんだけど、私はこの人全然善良じゃなくない?って思っちゃった。
みき この人は顔がすごい端正で、真実は写真を見てすごい綺麗だなって惹かれたんだけど、実際に話してそういう人だったと、描かれてて。
ゆかうんうん。顔は端正だけど、会話とかがスマートではない人?
みき そう。で、ここではすごい純粋な人だから悪気なく言っちゃうって描かれてるけど、ゆかちゃん的にはそれは違う?
ゆかこの人は本当に悪気がないのはわかるんだけど、私的には何かこれって、鼻毛が出てる人に対して鼻毛出てますよって言うか言わないかみたいな話に似てるなって思って。初めて会った異性の人に対して、鼻毛が出てますよって言う事って別に善良じゃないんじゃないかなって思って。

みきちゃんとか仲良い友達だったら、次の予定とかがあったりしたら指摘した方がいいから「鼻毛出てるよ~」とか言って指で押し込めたりとかすると思うんだけど(笑)
初めて会った異性の人だったら、その人が次トイレ行った時に気づいたりした方がマイナスが少ないと思うから、多分言わないかなって思って。
この人善良ではなくない?と。
みき なるほど、確かに。
私この話でめっちゃ思い出した人がいて、それが前職の先輩なんだけど、その人は私が入社した時からずっと私の面倒を見てくれる先輩だった人。
めっちゃ優しくはあるんだけど2次元オタクで女子とかにも興味がなかったの。だから、私のことも女としても扱わないし、別に女とか男とか関係ないただの後輩の人間としてすごいフラットな視点で指導してくれてた人で、大好きなんだけど。

会社を辞めて、1年後ぐらいに久しぶりにみんなで集まりましょうみたいな飲み会があったのね。
それで居酒屋で待ち合わせで、その先輩が先にいて扉あってガラッって久々に会った第一声が「顔のびたー?」って言われたのね。

なんか言い方も言い方なんだけど、それがめっちゃ衝撃で笑いが止まらなくなった事があって。会社を辞めて歯の矯正してたしちょっと痩せたりしてたのかもしれないんだけど、面白いなと思って。
ゆかめっちゃ面白い。想像ができる。笑
みき その先輩は悪気が絶対ないって知ってて、私を傷つけようともしてない。ただ思ったの。だから善良。ここで言うと。
ゆかあぁ、なるほど。ピュアってことだよね。確かにそう思うと善良かも。
みき でも、もしその先輩がこういう婚活の場において初めて出会った人に、さすがにそのワードは言わないと思うんだけど、
ゆか昔を知ってる。笑
みき 「あれ国産だよ。」とかは言いそうって思って。 
ゆか確かに。
関係性によっては、それが毒になる可能性もあるのか。
みき そうだね。その人が正しいというのと、私もその人がそれを言うことを認めている・・・?
ゆかそういう関係なら、良い人ではあるのか。なるほど、確かに。



こひもと

みき+ゆか / 吉祥寺でKOHIMOTO Inc.というWebサイト制作の会社を力を合わせて営んでいます🤝IT企業出身のエンジニアとデザイナーで元同期。