そもそもフェイクニュースとは
フェイクニュースは、定義がまだ定まっていない曖昧な言葉とされています。
総務省は、フェイクニュースの定義が曖昧な理由として、下記のように記しています。
フェイクニュースの定義は、研究者によって様々である。
嘘やデマ、陰謀論やプロパガンダ、誤情報*や偽情報*、扇情的なゴシップやディープフェイク、これらの情報がインターネット上を拡散して現実世界に負の影響をもたらす現象は、フェイクニュースという言葉で一括りにされているからである。
そこには必ずしも「フェイク(嘘)」ではないものも含まれており、嘘か真実かは主観によって変わる可能性のあるものもある。
*偽情報:人を混乱させ惑わすために意図的・意識的に作られたウソ、虚偽の情報
*誤情報:勘違いや誤解により拡散された間違った情報
なぜフェイクニュースが作られるのか
フェイクニュースが作られる目的はいくつかあります。
金銭的利益
記事内にあるWeb広告のクリックを誘発することで、広告収入を得るなどの金銭的利益を狙ったフェイクニュース。
政治的操作
世論操作や選挙介入など、特定の目的をもったフェイクニュース。
選挙期間中に誤った情報が特定の候補者を当選、または落選させる目的で発信され、「選挙フェイク」とも呼ばれています。
2016年の米大統領選はこのケースに該当します。
いたずら・虚栄心
個人やグループが注目を集めたい、または混乱を引き起こしたいという動機のもと作成したフェイクニュース。
こういった愉快犯によるフェイクニュースは、2016年4月の熊本地震の際にも大きな混乱を招きました。
フェイクニュースに惑わされる理由
米国の研究では、
フェイクニュースの方が通常のニュースよりも拡散スピードが速く、その範囲も広いということがわかっています。
10万件以上の旧Twitter投稿を分析したこの研究では、真実が1,500名に到達するには、フェイクニュースよりも6倍の時間がかかること、フェイクニュースの方が真実よりも70%も多く拡散されやすいことも明らかになりました。
また、
SNS上ではポジティブな感情よりも怒りや不安といったネガティブな感情の方が拡散されやすく、人は目新しい情報に敏感です。
「誰かに教えたくなるような目新しい要素」や「怒りや不安などの感情に訴える要素」、これらの特徴をもつフェイクニュースは広まるスピードが速く、そして人々は惑わされやすいのです。
フェイクニュースに惑わされない為に私たちにできること
①情報の発信元を確認する
情報の信頼性を評価する最初のステップは、発信元を確認することです。公式の機関、信頼できるメディア、または認知された専門家による情報かどうかを見極めましょう。
Yahoo!ニュースでは、日本ファクトチェックセンター(JFC)*と連携しファクトチェック記事を配信しています。
*日本ファクトチェックセンター(JFC):
ファクトチェック(事実の検証)の実践とメディア情報リテラシーの普及に取り組む非営利組織
②複数の情報源で確認する
一つのニュースに頼らず、同じニュースを複数の信頼できるメディアで確認しましょう。異なる視点から情報を比較することで、誤解や偏った情報に基づくフェイクニュースを避けることができます。
③情報の投稿・発信の時期を確認する
その情報がいつ作成・公開されたかを確認しましょう。元の情報が古いものだった場合、現在とは状況が異なるかもしれないので、注意が必要です。
④感情的な反応を抑える
怒りや恐怖、不安を煽るようなニュースは、感情的な反応を引き出しやすく、フェイクニュースの典型例です。感情的な内容ほど慎重に調べ、冷静な視点で情報を評価しましょう。
⑤見出しだけで判断せずに記事全体を読む
見出しだけで情報を判断するのは危険です。フェイクニュースや偽情報はセンセーショナルな見出しで人々の注意をひきつけようとするケースが多く、実際の内容は異なる場合があります。記事全体を読み、内容を確認することが重要です。
⑥画像や動画の信憑性を確認する
フェイクニュースは、偽の画像や無関係な画像・動画を用いられることが多いです。Googleの逆画像検索機能やTinEyeなどのツールを使って、画像の出所を突き止めることで、画像の信憑性を調べることができます。
逆画像検索については、下記の記事が参考になります。
⑦疑わしい情報は慎重に共有する
事実確認をしていない情報を他人に共有することは、時にフェイクニュースの拡散を助長します。特に感情的に強い反応を引き出すような情報は、すぐに情報を拡散せずに一度立ち止まり、信頼性を確認してから共有するかどうかを判断しましょう。
フェイクニュースに対する企業や組織の取り組み
ファクトチェック団体
ファクトチェックとは、社会に広がっている情報・ニュースや言説が事実に基づいているかどうかを調べ、そのプロセスを記事化して、正確な情報を人々と共有する活動のことを指します。
日本のファクトチェック団体であるファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)は、フェイクニュースや誤情報を調査し、その結果を公表しています。
FIJは日本の主要メディアと協力し、報道機関と共同でフェイクニュースを検証する活動を進めています。また、フェイクニュースが確認された場合には、その情報を迅速に報告し、修正を促す取り組みも行っています。
世界各国では様々なファクトチェック団体の活動が広がる一方で、日本はまだ遅れをとっていますが、近年ファクトチェックを実施するメディアも増えつつあります。
ソーシャルメディア企業
Facebook、Instagram、X(旧Twitter)、YouTubeなどのソーシャルメディアは、フェイクニュースが拡散されやすい場所です。これらの企業は、下記のようなフェイクニュース対策を行っています。
- アルゴリズムの改良
フェイクニュースを拡散しにくくするため、投稿の信頼性をアルゴリズムで評価し、怪しいコンテンツが広がらないようにしています。
- ファクトチェックプログラム
外部の独立したファクトチェック団体と提携し、投稿されたニュースが正しいかどうかを確認しています。虚偽が確認された情報には、「誤りである」旨の警告が表示され、拡散が制限されることもあります。
- 偽アカウントやボットの削除
フェイクニュースを広めるために使われる偽のアカウントやボット(自動的に投稿を行うプログラム)を発見し、削除する取り組みを強化しています。これにより、不正な拡散を防止しています。
政府や公的機関
総務省は、インターネット上のフェイクニュースや偽情報から国民を守るため、メディアリテラシー教育の普及を図っています。学校教育現場でのリテラシー向上を目指し、教師向けの教材やセミナーの提供などを行なっています。また、最近では「ICT活用リテラシー向上プロジェクト」として、幅広い年代向けたリテラシーコンテンツ紹介サイトを公開しました。
最後に
フェイクニュース拡大化の背景として、SNSの普及が挙げられます。
誰でも簡単に情報発信・取得ができるようになった一方で、取り巻く情報の真偽が判断しづらい世の中になりました。
闇雲に情報に飛びつくのではなく、冷静に情報を俯瞰すること、また不用意に拡散させないこと。
この記事が、改めて情報の向き合い方について考え直すきっかけとなると嬉しいです。
tacot
大学卒業後、デジタルマーケティング会社に入社しメディア広告営業やウェブサイトのディレクションを担当。前職の経験を活かしウェブディレクターをしながらWeb制作業界にまつわるコンテンツを執筆中。