令和3年に障害者差別解消法*が改正され、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。
障害者差別解消法*
平成25年(2013年)6月に障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として制定されました。
この法律では、障害のある人への障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を禁止するとともに、行政機関や事業者に対して「合理的配慮の提供」を行うものとしています。
事業者による「合理的配慮」が義務化されたことで、近年
ウェブアクセシビリティへの注目が集まっています。
ただし初めに補足しておきたい点として、
事業者による「合理的配慮の提供」の義務化によって、ウェブサイトのアクセシビリティへの対応が必須(法的義務)になるというわけではありません。
ウェブアクセシビリティについては、あくまで「努力義務」の範疇となります。
今回はその点も踏まえ「ウェブアクセシビリティ」について解説していきたいと思います。
まず、合理的配慮の提供とは?
日常生活・社会生活における設備やサービス等を利用するにあたって、障害のある人のみ利用が難しく、制限されてしまう場合があります。
このような社会的なバリアについて、
障害のある人から個々の場面で「社会的なバリアを取り除いてほしい」という意思が示された場合には、その実施に伴う負担が過重でない範囲で、バリアを取り除くために必要かつ合理的な対応をすることとされています。
上記を「合理的配慮の提供」といいます。
【合理的配慮の具体例】
💬障害のある人からの申出
障害のある人から「文字の読み書きに時間がかかるため、セミナーへの参加中にホワイトボードを最後まで書き写すことができない」との申出があった。
📖申出への対応(合理的配慮の提供)
書き写す代わりに、デジタルカメラやスマートフォン、タブレット端末などでホワイトボードを撮影できることとした。
障害者差別解消法・合理的配慮については、内閣府の下記ページが参考になります。
事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化
https://www.gov-online.go.jp/article/202402/entry-5611.html
リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/gouriteki_hairyo2/print.pdf
ウェブアクセシビリティとは?
「アクセシビリティ」という言葉は、
Access(近づく、アクセスするの意味)と
Ability(能力、できることの意味)からできています。
「近づくことができる」「アクセスできる」という意味から派生して「(製品やサービスを)利用できること、又はその到達度」という意味でも使われています。
つまり、ウェブアクセシビリティとは、
利用者の障害の有無やその程度、年齢や利用環境にかかわらず、ウェブで提供されている情報やサービスを利用できること、またはその到達度を意味します。
一般的に「ウェブアクセシビリティが確保できている」状態とは、具体的に次の4つのような状態になることが望まれます。
- 目が見えなくても情報が伝わる・操作できること
- キーボードだけで操作できること
- 一部の色が区別できなくても情報が欠けないこと
- 音声コンテンツや動画コンテンツでは、音声が聞こえなくても何を話しているかわかること
ウェブアクセシビリティを確保することで、障害のある人や色覚特性のある人、または高齢者など多くの人がウェブでの情報を入手できたり、デジタルサービスを利用できるようになります。
また一時的に障害がある状態の人もウェブアクセシビリティの対象として考慮される場合があります。(例:腕を骨折し、片腕が一時的に使えないなど)
環境の整備と合理的配慮
ウェブアクセシビリティ対応は「環境の整備」に該当する
冒頭で述べたように、ウェブアクセシビリティの向上については、「合理的配慮の提供(=法的義務)」ではなく、
「環境の整備(=努力義務)」に該当します。
「環境の整備」とは、主に不特定多数の障害者に対して行う事前の改善措置のことを指します。
一方で、「合理的配慮」とは、環境の整備を基礎として、特定の障害者の個別の状況に応じて講じられる措置のことです。
では実際に、どのようにウェブアクセシビリティに取り組むかについては、次回の記事で解説していきたいと思います。