AI時代のフェイクニュースを、どう受け取るか
SNSやニュースアプリを開くと、毎日のように流れてくる膨大な情報。便利になった一方で、「それは本当に事実なのか?」と立ち止まるのが難しい時代になりました。
とくに近年は、生成AIの普及によって「本物そっくりの画像や動画・専門家風のもっともらしい文章」が誰でも簡単につくれるようになっています。
フェイクニュースは、もはや「一部の悪意ある人が作るもの」ではありません。
私たち一人ひとりが、無自覚のまま拡散に関わってしまう可能性があるものへと変化しています。この記事では以下を整理しながら、人とテクノロジーが、より良い関係で共存するためのヒントを考えていきます。
- フェイクニュースがなぜ広がるのか
- AI時代に何が変わったのか
- 私たちはどう向き合えばいいのか
そもそもフェイクニュースとは
フェイクニュースは、定義がまだ定まっていない曖昧な言葉とされています。
総務省は、フェイクニュースの定義が曖昧な理由として、下記のように記しています。
フェイクニュースの定義は、研究者によって様々である。
嘘やデマ、陰謀論やプロパガンダ、誤情報*や偽情報*、扇情的なゴシップやディープフェイク、これらの情報がインターネット上を拡散して現実世界に負の影響をもたらす現象は、フェイクニュースという言葉で一括りにされているからである。
そこには必ずしも「フェイク(嘘)」ではないものも含まれており、嘘か真実かは主観によって変わる可能性のあるものもある。
*偽情報:人を混乱させ惑わすために意図的・意識的に作られたウソ、虚偽の情報
*誤情報:勘違いや誤解により拡散された間違った情報
近年では、生成AIによって作られた文章・画像・動画(ディープフェイク)も増え、「意図的な偽情報」と「悪意のない誤情報」の境界が、さらに見えにくくなっています。
なぜフェイクニュースが作られるのか
フェイクニュースが作られる目的はいくつかあります。
金銭的利益
記事内にあるWeb広告のクリックを誘発することで、広告収入を得るなどの金銭的利益を狙ったフェイクニュース。
現在は、AIによって大量の記事や投稿を自動生成できるため、
広告収益目的のフェイクニュースが、
短時間で量産されやすい構造になっています。
政治的操作
世論操作や選挙介入など、特定の目的をもったフェイクニュース。
選挙期間中に誤った情報が特定の候補者を当選、または落選させる目的で発信され、「選挙フェイク」とも呼ばれています。(2016年の米大統領選はこのケースに該当します。)
AIは「感情に刺さる言葉」を学習するのが得意です。
そのため、怒りや不安を煽る政治的フェイクは、より精巧になりやすい傾向があります。
いたずら・虚栄心
個人やグループが注目を集めたい、または混乱を引き起こしたいという動機のもと作成したフェイクニュース。
こういった愉快犯によるフェイクニュースは、2016年4月の熊本地震の際にも大きな混乱を招きました。
生成AIを使えば、「それっぽい情報」を簡単に作れるため、
悪意がなくても軽い気持ちの投稿が、結果的に混乱を生むケースも増えています。
フェイクニュースに惑わされやすくなった理由
米国の研究では、
フェイクニュースの方が通常のニュースよりも拡散スピードが速く、その範囲も広いということがわかっています。
10万件以上の旧Twitter投稿を分析したこの研究では、真実が1,500名に到達するには、フェイクニュースよりも6倍の時間がかかること、フェイクニュースの方が真実よりも70%も多く拡散されやすいことも明らかになりました。
また、
SNS上ではポジティブな感情よりも怒りや不安といったネガティブな感情の方が拡散されやすく、人は目新しい情報に敏感です。
「誰かに教えたくなるような目新しい要素」や「怒りや不安などの感情に訴える要素」、これらの特徴をもつフェイクニュースは広まるスピードが速く、そして人々は惑わされやすいのです。
そして、AI時代のフェイクニュースが厄介なのは、完全なウソではなく、「一部だけ本当」「感情的には納得できてしまう」形で作られる点です。
人は論理よりも感情で反応しやすく、目新しさや不安を刺激されると、確認よりも共有を優先してしまいます。
テクノロジーが進化した今こそ、
情報に反応する速さより、立ち止まる余白が求められています。
フェイクニュースに惑わされない為に私たちにできること
① 情報の発信元を確認する
情報の信頼性を評価する最初のステップは、発信元を確認することです。公式の機関、信頼できるメディア、または認知された専門家による情報かどうかを見極めましょう。
Yahoo!ニュースでは、日本ファクトチェックセンター(JFC)*と連携しファクトチェック記事を配信しています。
*日本ファクトチェックセンター(JFC):
ファクトチェック(事実の検証)の実践とメディア情報リテラシーの普及に取り組む非営利組織
② 複数の情報源で確認する
一つのニュースに頼らず、同じニュースを複数の信頼できるメディアで確認しましょう。異なる視点から情報を比較することで、誤解や偏った情報に基づくフェイクニュースを避けることができます。
③ 情報の投稿・発信の時期を確認する
その情報がいつ作成・公開されたかを確認しましょう。元の情報が古いものだった場合、現在とは状況が異なるかもしれないので、注意が必要です。
④ 感情的な反応を抑える
怒りや恐怖、不安を煽るようなニュースは、感情的な反応を引き出しやすく、フェイクニュースの典型例です。感情的な内容ほど慎重に調べ、冷静な視点で情報を評価しましょう。
⑤ 見出しだけで判断せずに記事全体を読む
見出しだけで情報を判断するのは危険です。フェイクニュースや偽情報はセンセーショナルな見出しで人々の注意をひきつけようとするケースが多く、実際の内容は異なる場合があります。記事全体を読み、内容を確認することが重要です。
⑥ 画像や動画の信憑性を確認する
フェイクニュースは、偽の画像や無関係な画像・動画を用いられることが多いです。Googleの逆画像検索機能やTinEyeなどのツールを使って、画像の出所を突き止めることで、画像の信憑性を調べることができます。
逆画像検索については、下記の記事が参考になります。
⑦ 疑わしい情報は慎重に共有する
事実確認をしていない情報を他人に共有することは、時にフェイクニュースの拡散を助長します。特に感情的に強い反応を引き出すような情報は、すぐに情報を拡散せずに一度立ち止まり、信頼性を確認してから共有するかどうかを判断しましょう。
⑧ AIの回答も「一つの情報源」として扱う
生成AIは非常に便利ですが、必ずしも常に正しい情報を返すわけではありません。AIは「もっともらしい文章」を生成する仕組みのため、事実確認が必要なテーマでは、
一次情報/公的機関/複数の信頼できるメディアと照らし合わせて使うことが重要です。
AIは「考える補助輪」として使い、判断の主体は、あくまで人間であることを忘れないようにしましょう。
フェイクニュース対策は「誰かの仕事」ではなくなった
企業やプラットフォームの対策が進む一方で、フェイクニュースを完全になくすことは現実的ではありません。
だからこそ重要なのは、テクノロジーに任せきりにしない、
私たち一人ひとりの姿勢です。
社会側でも対策は進んでいる
フェイクニュース対策は、個人の注意だけでなく、メディア・プラットフォーム・公的機関でも進められています。
ただし完全に防ぐのは難しいため、最終的には私たち自身が「立ち止まって確かめる」習慣を持つことが大切です。
ファクトチェック団体
ファクトチェックとは、社会に広がっている情報・ニュースや言説が事実に基づいているかどうかを調べ、そのプロセスを記事化して、正確な情報を人々と共有する活動のことを指します。
日本のファクトチェック団体であるファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)は、フェイクニュースや誤情報を調査し、その結果を公表しています。
FIJは日本の主要メディアと協力し、報道機関と共同でフェイクニュースを検証する活動を進めています。また、フェイクニュースが確認された場合には、その情報を迅速に報告し、修正を促す取り組みも行っています。
ソーシャルメディア企業

Facebook、Instagram、X(旧Twitter)、YouTubeなどのソーシャルメディアは、フェイクニュースが拡散されやすい場所です。各社も対策を進めていますが、投稿量や拡散スピードが圧倒的なため、すべてを防ぎ切るのは難しいのが現状です。
政府や公的機関
総務省は、インターネット上のフェイクニュースや偽情報から国民を守るため、メディアリテラシー教育の普及を図っています。学校教育現場でのリテラシー向上を目指し、教師向けの教材やセミナーの提供などを行なっています。また、最近では「ICT活用リテラシー向上プロジェクト」として、幅広い年代向けたリテラシーコンテンツ紹介サイトを公開しました。
最後に
テクノロジーは、私たちの生活を確実に便利にしてきました。本来は「人の判断を助けるための道具」です。
SNSの普及で、誰でも簡単に情報発信・取得ができるようになった一方で、取り巻く情報の真偽が判断しづらい世の中になりました。
しかし、AIの便利さが増すほど、「考えなくても流れてくる情報」に流されやすくなるのも事実です。
フェイクニュースに惑わされないことは、正解を見抜く力よりも、
疑い、立ち止まり、考え直す余白を持つことなのかもしれません。
闇雲に情報に飛びつくのではなく、冷静に情報を俯瞰すること、また不用意に拡散させないこと。
この記事が、改めて情報の向き合い方について考え直すきっかけとなると嬉しいです。
編集者:tacot
大学卒業後、デジタルマーケティング会社に入社しメディア広告営業やウェブサイトのディレクションを担当。前職の経験を活かしウェブディレクターをしながらWeb制作業界にまつわるコンテンツを執筆中。
監修者:Yuka Fujimoto
Webディレクター / デザイナー。美大在学中に、画面ひとつで世界中の人と繋がれるWebの可能性やデザインへ興味を持つ。インターンを経て就職したIT企業で実務経験を積む。肉より魚派🐟